郵政株大量売出し-「無知な個人投資家」というカモを増やす証券会社

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時価総額6兆円の日本を代表する大企業・日本郵政の約80%を占める政府保有株の売り出しが決まりました。

約1.3兆円規模の巨大ビックディールとなりますが、この売出先の多くは個人投資家を当て込んでおり、主幹事証券はテレビCMなどによる需要喚起も行うそうです。

 

高齢の投資家や投資経験の浅い人、投資をしたことがない人にとっては、「日本郵政=優良株、持っても大丈夫な株」というイメージの人も多く、これを機に新規顧客の獲得も狙おうという動きのようです。

 

しかし私個人の考えとしては、「郵政株を買う人?証券会社の良い鴨だね」という感じです。

 

結論から言えば、「郵政株なんぞ買う必要はない」です。

 

2015年11月日本郵政グループ新規上場

日本郵政をはじめとする日本郵政グループは2015年11月4日に東証に上場しました。

売出規模の大きさ、日本郵政グループという日本を代表する超巨大企業ということもあり、一般のニュースでも大きく取り上げられるほどの注目度でした。

 

1.1 華麗なる上場ゴール?

超巨大企業の新規上場ということもあり、この上場を機に新規で口座を開設した人も非常に多かったようですね。

最大手証券の野村証券では2015年の日本郵政グループ上場時、上場前月の10月の口座開設数は前年の2倍近くまで増加しています。

 

日本郵政グループの知名度は証券会社にとって美味しすぎるものだったんですね。

 

大きな注目を集めた日本郵政グループの上場でしたが、上場後1,999円を高値を付けた後は下落の一途を辿っています。

その株価の推移は投資家の間で知られる言葉いうところの「上場ゴール」*1といわれて遜色ないものとなっています。

 

*1-上場直後の値動きが激しい期間を高値に株価下落の一途を辿ること。上場時=業績のピーク、となること

 

1.2 含み損を抱える個人投資家

日本郵政はその時価総額の大きさや売出株数の多さ、知名度から主に中高年の個人投資家に人気の高い株式であったと思います。

この層の投資家の場合、その多くを中長期間でじっくりと保有するようなタイプの投資家が多数いると思われます。

 

日本郵政の場合、公募価格は1,400円に対し、初値1,631円でした。

公募価格を上回る価格で寄り付き、安堵した投資家も多かったのではないでしょうか?

しかしこうした上場直後の株式は、いわゆる短期の値幅を取る「トレーダー」が群がることでも知られており、上場後ある程度の期間は激しい値動きにさらされます。

 

日本郵政の場合も、株式数が多かったものの人気の高い株式ということもあってこのトレーダーも数多く取引に参加しました。その結果、初値1,631円を付けた株価はその後1か月で2,000円まであと一歩のところまで急上昇しました。

 

しかし2,000円が大きな壁となり反落。

以後2016年年初の地合いの悪化も重なり、翌年2月には1,200円台まで急落し、現在も1,300円台を彷徨っています。

 

「日本郵政は政府の後ろ盾があるから大丈夫」

 

そう安心していた人達のほとんど全てといっていい個人投資家は含み損を抱えている状態ではないでしょうか?

資産運用に関する記事はこちらも要チェック

 

本業の将来性不安・買収先の業績悪化

「日本郵政は政府の後ろ盾あるし、潰れはしないだろうし安全な投資先でしょ?」

確かに、「倒産」というところまでは考えにくいかもしれません。

 

しかし、倒産はせずとも「株価は下落する」ものです。

「倒産しないから安心?」

 

資産運用って、潰れないところに投資さえすれば、資産を減らしても良いんですか?

 

日本郵政はこれから先も、株価が大きく上昇するような業績回復の見通しは立っていないです。

そんな企業に、大切な資産を数十、数百、数千万を投資して資産が減っていくのを指をくわえてみているんですか?

 

2.1 日本郵政の本業は苦戦続き

日本郵政は【郵便・物流事業】、【金融窓口事業】、【国際物流事業】の3つの事業からなっています。

 

2.1.1【郵便・物流事業】:物流好調も郵便の先は暗い

郵便物の取り扱いやゆうパックなどの配送サービスが中心です。

詳しくはここでは省略しますが、郵便事業に関しては今後も苦戦が続くでしょうし、長い目で見れば非常に苦しい事業になることは間違いないでしょう。

物流事業はECなどの普及により取扱量は増えてはいますが、競合との争いやドライバーの確保、今後の自動運転に伴う動きが読めず不透明が増しています。

 

2.1.2【金融窓口事業】:大きな成長見込めず、マイナス金利等も懸念材料

かんぽ生命保険の販売や不動産事業、物販事業で構成されていますが、保険手数料・銀行手数料が収益の大半を占めています。

保険関係については昨年度は好調に推移しましたが、「マイナス金利に伴う運用成績の悪化」などで大手保険会社でも一部利回りの見直しを図るなど、決して良い環境にはありません。

決して大崩れするような事業ではないかもしれませんが、反対に大きな成長にも繋がる事業ではありません。

 

2.1.3【国際物流事業】:大型買収大失敗で先は見えず

オーストラリアのトール社を買収し参入した事業です。

人口減少やインターネットによる影響で国内市場の縮小に対応するための策として、6,200億円を投じて買収しました。

しかし買収したタイミングの決算を境にトール社は3期連続で営業成績を悪化させ、ついに日本郵政も4,000億円の大規模な減損をするに至りました。

 

トール社を買収し、総合物流企業への転身を図ったものの見事に失敗。

 

トール社の経営陣の刷新や人員削減などの施策を試みるものの、これから業績が回復する見込みはありません。

 

 

 

先が見えない中での大型売出

実は日本郵政の収益柱は自社事業ではなく、かんぽ生命とゆうちょ銀行からの配当金収入が柱となっています。

かんぽ生命の場合には89%の株式を保有し、ゆうちょ銀行も70%を超える株式を保有しており、その配当金収入は莫大な額になっています。

 

ただ、この2社の株式は段階的に売却していく予定で、自社での事業収入の確保が必須です。

しかし先ほどもあげたように、現在の日本郵政の事業で将来が明るいものは何一つなく、「多額の資産も持っていることによる配当しか期待できるものはない」というのが現状です。

 

積極的に買う理由がなく、しかも数多くの個人投資家が含み損を抱えている中での売出しは誰にお得なのでしょうか?

3.1 個人投資家中心の売り出し

今回も売り出しの中心は国内の個人投資家でしょう。

 

売り出しにかかわる証券会社は、今回も新規上場時と同じようにテレビCMで大々的に宣伝し新規顧客を獲得しようと躍起なようです。

 

既に投資の世界でバリバリやっている人達からすれば、「おいしい鴨がやってきた」というような機会ですし、証券会社からしても「無知な投資家が増えて万々歳」といった感じでしょう。

 

投資をする上で失敗はつきものですが、わざわざリスクが高いところに好んで飛び込む必要はないと思います。

 

自己責任ですが。

 

3.2 売出でさらに上値重く

序盤でも少し触れましたが、日本郵政の場合は公開価格が1,400円、初値が1,631円でした。

高値1,999円に届かないのは言うまでもなく、2016年2月の株価下落の場合に安値を付けたあとのリバウンドでは初値1,600円付近が抵抗ラインとなって再度下落に転じましたし、昨年末のトランプ相場による好調な市況でも1,600円がやはり壁となって反落しました。

 

初値である1,600円が大きな抵抗ラインとして機能していますし、それを抜けても1,800円、2,000円とすぐ目の前にさらに大きな壁が存在しています。

 

ただでさえ株価は重く上がりにくい状況になっている中で、さらに大量の売り出しとなれば、株価下抜けも覚悟が必要になるかもしれません。

 

投資先としての魅力は?

投資先の魅力も考えてみましたが、高配当というところ以外は何もありませんでした。

 

その高配当も、米国の高配当株と比較すれば特筆した数字でもなく、米国の高配当株であればまだ業績が良い企業、将来が期待できる企業も複数あり、わざわざ好き好んで日本郵政株なんて買う必要性が見出せません。

 

 

まとめ

正直この株を買って喜ぶのは、「新規顧客が増えて鴨が増える証券会社」と「市場に鴨が増える投機家」くらいじゃないでしょうか?

 

もちろん投資で資産運用するのは大賛成。

ただ、そのやり方はしっかりと考えてすることをおすすめします。


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